若旦那様の憂鬱

しばらくそのまま、花が落ち着くのを待つ事にする。

「柊君…この部屋、1人じゃ広過ぎて寂しくない?」
やっと力が抜けたのか花はそう柊生に聞いてくる。

「寂しいか……それは、ずっと子供の頃から感じてるから、麻痺してるのかもしれないな。」

そう柊生が言う。

「花が側にいてくれたら寂しくないから、
大丈夫。」
柊生は花の髪を撫ぜながら優しく微笑む。

「花は?小さい頃は女将さんと2人だけの生活だったんだろ?寂しかったか?」

花が話し出しやすいように導いてくれる。

そんな柊生の優しさを感じながら、
花は一言ずつ噛み締め、話し出す。

「柊君は、お母さんから何処まで聞いてるの?」

「女将さんからは、
なぜこの場所に来たのかって事と、
親父からは花のお父さんの話しを少し聞いてるだけだ。詳しくは知らない。」

柊生はそう言って、
コーヒーをひと口ごくんと飲んで、
話を続ける。

「あまり触れて欲しくない過去だと思ったし、軽い気持ちで聞けるような内容じゃ無いと思ってたから。
…だから、
花が聞いて欲しいと思う時まで待つし、
今だって、話したくなかったら話さなくていい。」

そう言って、花を横向きに抱き抱え直す。

思いのほか、顔が近くて花は恥ずかしくなって俯く。