前嶋貴文さん…。

背が高くて、爽やかで好青年…。

それって…柊君みたいな人って事？

ラウンジには数人いて、
新聞を読んでる白髪の人やコーヒーを飲んでるご夫婦。
キョロキョロと見渡すけどお母さんが言っていたような人は居ないなぁ。

まだ、来てないのかな？
花は探しながら歩き出す。

「一橋　花さん。」

不意に後ろから声をかけられる。

えっ？と思って振り返ると、
爽やかを絵に描いたような、
長身の男性が微笑みを浮かべて立っていた。

「はい。……前嶋さんですか？」

「ええ、初めまして。
良かった間に合って、今来られたところですか？」

「はい…、初めまして。」

そう言いながらお辞儀をする。

柊君と同じくらい背が高いなぁと思いながら見上げる。

「どこか座りましょうか。」

笑顔でそう言って、席の方に導いてくれる。

本当に、爽やかなイケメンなのになぜお見合いなんて？と思うほどモテそうな人だ。

不思議に思いながら向かい合わせのソファに座る。

私の今日の使命は、断って早めに切り上げて帰る事。

「あの、今日は私、
せっかくのお話しなのですが…
お断りをしようと思って来たんです。」

緊張のせいか手が震えてしまう。