若旦那様の憂鬱

お昼過ぎに、柊君の言う通り雪が降り始める。

『お疲れ様。
柊君の言ってた通り雪が降り出したよ。』

柊君にメールする。
すると数分後には既読が付いて、

『お疲れ様。吹雪く事は無いけど夜まで続くから、
帰り滑らない様に気を付けて帰れよ。』

と返信がくる。忙しいだろうに、意外とまめに連絡くれる人なんだなと、言う事を知った。

そんな些細なメールのやり取りが嬉しい。
柊君が凄く近くに感じられる。

「花、なんか嬉しそうね。誰からのメール?」
向かいでAランチの日替わり定食を食べている、詩織ちゃんがニヤニヤした顔で聞いてくる。

「ちょっとね…。」
恋多き女子の彼女には、上手く立ち回れそうも無い為濁しておく。

「えぇーー気になるぅ。もしかして成人式で声かけられた?
メールとか交換しちゃったの?花の恋バナ聴きたい!!」

「ナイナイ。そう言うの無いから。」
私は苦笑いしながら詩織ちゃんを見る。

「詩織ちゃんは?今度の彼氏はいい感じなんでしょ?」

「まぁね。優しくて悪く無いんだけどねー。
全部何でもいいって、詩織決めてって言うんだよねー。何かそれって男としてさぁ。
物足りないんだよね。もっと、俺について来いってぐらいの感じがいいんだけど。」

「えー、優しい人が1番だよ。贅沢な悩みだね。」
恋多き彼女の悩みは尽きないようで…恋愛初心者の私には到底分からない。

「詩織ちゃんは運命の相手って感じた事ある?」
今朝、母と話した話を思い出して聞いてみる。
「運命の相手?この人だ!!っていつも思うよ。
でもさ、付き合ってみるとなんか違うなぁってなるんだよね。」

「詩織ちゃんの理想が高過ぎるんじゃ無い?」

「私の理想の人はねー。柊様だから。なかなかあそこまでのハイスペック男子はいないわけよ。」

「えっ!!ゴホッゴホッ。」
飲んでたお茶を吹き出しそうになる。

「大丈夫?花。」
ケラケラ笑いながら詩織ちゃんが背中をさすってくれる。

「柊君が理想なの?」

「あの癒される笑顔と大人な感じ。あの瞳に見つめられたら誰だって運命感じちゃうし、抱きしめられたいって思っちゃうでしょ。」

「……モテモテだなぁ。」
ハイスペックで大人な感じ…私には身に余る相手なんだろうな柊君は…。

実は付き合いだしたなんて、詩織ちゃんにはとても言え無いな…。

「成人式の時に一緒に撮って貰った写真見てはニヤニヤしちゃう。あっ、でも、やっぱり写真見て改めて思ったけど、柊様は高嶺の花だなぁ。畏れ多くて付き合いたいっておこがましいなぁって。
遠目でいいから見つめてたいって言うか、一種のファン心理ってヤツだから心配しないで。」

「詩織ちゃんでもそう思うんだ。」

詩織ちゃんで釣り合わなかったら、私なんてもっとだ…。現実を目の当たりにした気がして少し落ち込む。

「柊様だったら選び放題なのに、彼女一筋なところもまた素敵だよね。」

「そ、そうだね…。」

実は、私が彼女になったなんて、これっぽっちも思わないよね……。

「私もせめて妹になりたいな。優しく守られたい。」

「…お母さんみたいに心配症だけどね。」
柊君のマイナスポイントはそのくらいしか見つからない。

「花が羨ましいよ。私も過保護なほど心配されたい。」

逆に羨ましがられちゃった…。

ハイスペック彼氏かぁ。ますます私が隣りで並んでも、釣り合いが取れそうも無いと落ち込んでしまう。

「なんで花が落ち込むの?」
楽しそうにそう詩織ちゃんが笑う。