うっすら聞こえる,俺の安全を保証する高い声。

覚えの無い,透き通った声だった。



『では,お代は次回ご来店の際で……』

『ううん,俺が払う。大した額でもないしね。この人がもし起きたら,その時は返して貰うよ。それでいい?』

『お客様がよろしいのであれば,私は構いません』

『うん。じゃあね』

『ええ,またいつでもお越しください』



ゆさゆさと,少し前に感じていたのより強く身体を揺さぶられる。

なんだ……と思いながらもそのままでいれば



『ねぇ,いつまで寝てる気? 帰るよ』




一層強く身体を揺すぶられた。

帰るって……どこにだよ。

知らない人間に寄りかかって,俺は店を出た。