今夜も君を独り占め。

ザンッと,蒼が下に来るように動く。

案の定,蒼は驚いたように目を見開いた。

でも,まだ余裕そうに笑っている。

俺はふーーと重く息を吐いた。



「時々,俺に失礼なこと考えてる気がしてたんだよ。でもまさか,そんなことだったなんて。可愛いね,あつ。ねぇ,あつは?」



蒼が俺に問いかける。



「───好きだ」

「うん。そっか。ね,あつ。俺のこと,抱きたい?」



俺の手に愉しそうな蒼の,少しひんやりした肌が触れる。

すっと上にスライドした時。

その手首を力強く掴まれて,俺の世界は反転した。



「こんにゃろ……っ」

「うん,ごめんね? でもそっちの方があつには合ってるよ。……でも残念,あつに信用されてないなんて思ってもなかった」



それはまた別のはな……



「だから,思い知らせてあげようと思って」

「は?」

「あつは黙って俺に犯されて。……あつ,残念だね。今日もそれは,俺の方」



それだけ残して,蒼は俺にかぶり付いた。

こいつ,ほんとに変わらねぇなと俺は思う。

喉に,切れた唇の血が流れていった。

最悪な愛情表現だ。

ふざけやがってと,音にすることも叶わない。

本当に……

飢えた猛獣の独占欲は,受け止めるだけでも一苦労。

それでも気持ちを絶てない俺が,本当は1番あほなんだ。


                  ーFin