『そうだよ? 今ごろ気がついた? あははっもう遅いけどね』



ぐいっと腕を引かれ,前……ベッドに倒れた。

覆い被さる様に落ちるかと思われた俺の身体は。

寸前でぐるりと変えられて。

目を開けた時,俺の上に寄井と言う男がいた。

どうみても華奢である男に,俺は馬乗りにされていた。

そして悟る。

……抱かれるの,俺の方かよ。

抱く気のない,抱けるかも分からない俺を思えば当たり前と言えば当たり前だけど……



『もうさ,会社……まぁ父親のだけど。それも行けるとこまで行っちゃって。お金ももういらないし。もうこれくらいしかする事無いんだよね』



何の話だと思っている間に,ふっと影が深くなって。

寄井の前髪が俺に当たって。

目を見開く俺は,どこのスポンジケーキよりも柔らかく,キスをされていた。



『君,名前は?』