エレベータの揺れで吐きそうになった時,俺はようやく意識を取り戻した。



『ここ,どこだ……』



いつの間にかボーっとして,何となく誘導されていた様だった。
 
片手で頭を押さえながら,それでも歩くと……

並んだ部屋の1つに連れ込まれた。

やたらと広い家。

聞くと,まだ若そうなそいつ1人の家だと言う。

広い玄関から入り,最奥のリビングの手前,左手の部屋に入った。

部屋の中には,黒いベッドとテレビ,そしてカーテン……のみ。

そう言う部屋,としか想えなかった。

返答をしなかった言葉が現実味を増す。



『……いや,冗談に決まって……』

『何が?』



探るような瞳に,俺は小さく戦いた。



『さっきのあれ,ガチなのか?』



悪い,帰る。

その一言が喉につかえる。