ガンドルフィ公爵家へは、皇族の馬車で送ってもらった。

 おおげさすぎるから、と断った。だけれも、フランコの客人であるからそれ相応の体裁は必要である。もしも断わられるなら、お茶会に参加させない。

 アーダとジェラルドに、そのようにおしきられてしまったのである。

 馬車はガンドルフィ公爵家の大門をくぐり、森の中を進む。

 そうして、わたしは彼女たちに会ったのである。

 これまでのわたしだったら、両親やお姉様の目があったのでおとなしく従順だった。なにを言われてもされれても、気弱な笑みを浮かべるだけだった。

 そうしておけば、心も体も最小限の被害で済ませられる。
 そのことを、幼い頃に学んだから。

 だけど、いまはもう装う必要はない。これまでのように、言いなりの「役立たず聖女」のふりをする必要はない。

 公爵令嬢は、わたしのことをフランコやカストより把握しているはず。
 わたしがフランコの客人としてこの帝国にやってきたことを知ってから、父親に頼んでわたしのことをつぶさに調べさせたはず。

 だから、下手に隠し立てしたりごまかしたり見栄をはったりしない方がいい。