「ナオ、いいんだ。さあ、頭を上げて。まず、おれが仮面をつけるのは、本気であることを知らしめるときなんだ。他国との交渉や戦争、帝国内でも政敵に対するときとか重要事項を決するときとか。それ以外でもつけるときはあるが、たいていはいま言った場合だ。それから、謝る必要などない。その、照れ臭かっただけだから。例の噂、つまりおれは世にも怖ろしい魔物や怪物と怖れられているからね。仮面をつけていようがいまいが、おれの顔をジッと見つめる人はいない。おれの顔を見つめでもしたら、目から刃物か飛び出してくるとか石に変身してしまうとか、多くの人が思っているのかもね」

 彼の冗談に笑ってしまった。

「そういうわけで、ジッと見つめられて照れ臭かったというわけだ」
「申し訳ありません」

 謝罪はいらないと言われても、謝罪せずにはいられない。

 そんなわたしの謝罪を、彼は苦笑してスルーしてくれた。

「ところで、よく眠れたかい?」
「申し訳ありません」

 また謝ってしまった。