「やあ、ナオ」

 寝室内に入って来たのは、フランコだった。

「陛下、いえ、フランコ様、おはようございます。ではありませんね。ご挨拶申し上げます」

 陛下と言ってしまい、すぐに言い直した。しかも、すでにお昼をすぎているのに「おはようございます」、だなんて。スカートの裾を上げ、慌てて挨拶しなおした。

 テラスから室内に入ると、彼はやわらかい笑みを浮かべた。

 彼のその笑顔を見つめつつ、皇宮内では仮面はつけないのだろうかとふと思った。

「ああ、仮面のこと?」

 やわらかい笑みがいたずらっぽい笑みにかわった。

「きみの心の中はのぞけないけど、そんなに凝視されたら推測するのは簡単だよ」
「も、申し訳ありません」

 顔が火照るのを感じる。それを隠すのもあって、頭を下げた。