フランコの申し出はありがたいけれど、それを受けてのほほんとするわけにはいかない気がする。

「ならば、おれの読書友達になってくれないか?」
「はい?」
「カストも本は読むが、感想を述べあったり共感しあったり、なんてことはしてくれない」
「当然です。本について、男どうしでべちゃくちゃ語り合うのですか?バカバカしい」
「バカバカしいとはなんだ?」
「バカバカしすぎます。ったく、兄上。素直じゃないし、まわりくどいんですよ」

 カストは、つぶやきつつ立ち上がった。

「なんだって?きこえなかったぞ。って、どこへ行く?」
「官舎に戻るのです。もう夜も遅いですからね。兄上も、いいかげん公爵令嬢を開放して下さいよ」

 カストは、わたしを見下ろした。可愛い顔にいたずらっぽい笑みが浮かんでいる。