「りゅ、竜帝?」

 驚きすぎて、思わず叫んでしまった。

 二人が同時にこちらを見た。

「ああ。わからなかったかな?」
「兄上、当り前です。素顔で鎧やマントもありません。竜帝の仮面の下は、見るに堪えない醜い顔というもっぱらの評判ですからね」
「ちょっと待て。おれの素顔は、そこまでひどいことになっているのか?」
「あなたがわざと流す噂に、勝手に尾ひれがついてしまうのです。もうすぐしたら、目が三つに鼻が四つに口が二つあって、尻尾が生えている。なーんてことになりますよ。カッコをつけて仮面などつけるものじゃないですね。しかも銀仮面だなんて……。古典小説を読みすぎなのではありませんか?」
「おまえ、ふだんからそんなことを思っているのか?」
「おや?他人(ひと)の心をのぞくことの出来るあなたが見抜けなかったと?」
「おまえの心をのぞくほど、おれは嫌な兄じゃないつもりだがな。というよりか、おまえの心はおれの力でものぞけん」