「執務室にもたくさんあるし、宮殿の図書にも何万冊ある。どこにあるものでも好きなときに好きなだけ読むといい」

 彼がなんのことを言っているのかわからなかったけれど、すぐに本のことだと思いいたった。

「ありがとうございます」

 すごいわ。宮殿内に図書室まであるのね。

 感心してしまったけれど、いまはそこじゃないわよね?

「バトーニ公爵令嬢、フランコ・ベニーニだ」

 彼が手を差し出してきた。

「ナオ・バトーニです」

 一瞬、ためらった。だけど、すぐにその手を握った。

 大きくて分厚い手だと思った。

 なにより、あたたかい。

 彼の手に軽く力が加わり、すぐにはなれた。