そして、大聖女と認められた者はかならず国王の正妃になる。
 これもまた当然のことながら、幼少の頃から大聖女候補であり王妃候補である。

 物心ついたときから、聖女として王妃候補として生かされてきた。

 ただそれだけでしかなかった。

 それ以外には何もなかった。

 大好きな読書やですら、王宮の図書館に聖女関係の本を借りるついでに小説などをこっそり借り、こっそり読まなければならなかった。それから、乗馬もそう。唯一の慰めであり親友の愛馬ルーポに会うことすらなかなか難しい。

 そういったことだけではない。つねに従順で控えめに。そうするよう努力した。だれに何を言われても、文句ひとつ、イヤな顔もせず従った。誹謗中傷や理不尽なことを言われても耐え忍んだ。言葉だけでなく、肉体的に折檻されても同様にじっと耐えた。

 されるがまま、流されるままにすごしてきた。

 だから、だれもが勘違いしている。

 わたしには聖女としての力がまったくない、役立たずだと。