「役立たず聖女」だからと捨てられた私を拾って溺愛し大切にしてくれたのは、大国の冷酷非情な竜帝でした~真の聖女の加護の力が失われたと気がついても手遅れですし、助けるつもりはありません~

 どうせいつかわかること。彼を驚かせないように、わたし自身では言いにくいことを告げてくれたのである。

 彼は怒り狂ったらしい。それこそ、すぐにでもアロイージ王国に飛んで行きそうな勢いで。

 侯爵夫人は、それもなだめてくれた。

「ナオ、結婚してくれてありがとう」
「結婚はまだですよ。この間に何かあるかも」
「おいおい、やめてくれよ。まさか浮気とかないだろうね」
「わたしは大丈夫です。ですが、フランコ様は?」
「おれも大丈夫」

 彼は、わたしを抱き寄せた。

「それに、たったの十日間だ。いや、それほどもかからせない。急いで戻ってくる」

 わたしの耳にささやく。

「エルマと待っています」
「ああ」

 わたしを見下ろす彼を見上げるわたし。

 彼の美しい顔が近づいてくる。

 ここは、瞼を閉じるところね。

 だから、瞼を閉じて……。