「まさか、竜帝?あの仮面の下は、こんないい顔だったの?これだったら、わたしがバローに帝国(ここ)に来ればよかった。こっちの国の方が裕福じゃない。それに、皇宮だって立派だわ。ケチで猜疑心が強くってバカなアデルモより、竜帝の方がずっとマシかもしれないし」

 わが姉ながら恥ずかしすぎる。

「親衛隊っ、こいつらを放りだせ」
「はっ」

 皇帝付きの親衛隊の隊員のウベルトとトーニオが駆けて来た。

「すこしは参っているかと皇宮に入れてやったが、愚か者はやはり愚か者にすぎん。アロイージ王国がどうなろうと、おれやナオの知ったことではない」
「なによっ!あなたもケチなわけ?ナオを連れて帰るついでに、金貨とか物資とかくれたっていいじゃない」
 
 お姉様の金切り声が、静かな庭園に響き渡る。