「ナオ、朝早くすまない。どうしても早急に伝えたいことがあったから」
「フランコ様、おはようございます」

 いつもの着古したドレスの裾を上げ、彼に挨拶をした。

 心臓は、さらに激しく踊っている。

 声、震えていなかったわよね。

「あー、仮面を持ってくればよかった」

 姿勢を正したとき、フランコがつぶやいた。

「ダメだ。緊張しすぎてうまく言えるかどうかわからない」

 緊張しすぎてどうかなってしまいそうなわたしの前で、彼は視線を彷徨わせつつ独り言をつぶやいている。

 そのとき、「ブルルルル」と馬の鼻を鳴らす音がきこえてきた。