「ふんっ!陛下は、いまごろドラーギ国で駆けずり回っている。だから、直接言いたくても言えぬな」

 宰相は、鼻を鳴らした。

 宰相は、フランコが駆けずり回っている要因が宰相自身の推しのジルド皇子であることを忘れてしまっているのね。
 
「いいや、ここにいるぞ。遠慮なく言うがいい」

 そのとき、見物人たちが左右に分かれて道が出来た。

 フランコである。驚くべきことに、彼がカストを従えて現れた。

「へ、陛下」
「陛下」

 宰相とデボラとジルドは口をあんぐり開け、周囲で成り行きを見守っている人たちは、口々に陛下と呼んでいる。