「このナオはね、隣国アロイージ王国で偽聖女とか役立たずの聖女って言われてこの帝国に逃げてきたのよ。そのお蔭で、隣国はいま最悪な状況なの。いますぐにでも滅びてもおかしくないわ」

 デボラは、腰に手をあてエラソーに言った。

 そして、その横ではジルドがエラソーにこちらを睨みつけている。

「はぁ……」

 としか反応のしようもない。

 別にアロイージ王国でのことを言われてもかまわない。

 だけど、そんなことを大勢の前で告げたところで、どうでもいい話なんじゃないかしら。

 だって、誰の特にも損にもならないんですもの。

 わたしがこの国で誰かの聖女としての立場を奪ったというのなら、話は違ってくる。

 でも、もともとこの国に聖女はいない。