「それはよかったわ。子どもたちのせいでこの帝国を嫌いになってもらったら困るから」

 そして、侯爵夫人はバルナバにそっくり。

 メガネこそかけていないけれど、若々しくて美しい。

 なにより、すごくやさしそう。

 彼女がフランコやカストの乳母を務めていたのね。

「さっ、入って。夕食の準備は出来ているわ。だれかさんがお腹をすかせているから、暴れ出す前に食事にしましょう」
「はい。お邪魔します」
「だれかさんってだれのこと?ああ、エルマのことだね」
「お兄様、違うわよ。お父様でしょう?」
「わたしのことではないぞ、愛するエルマ。バルのことだろう」