「わがバリオーニ帝国に聖女など不要だ」
「いや、聖女はいた方が安心だぞ。国を守護してくれる。気休めでも、一人いれば国は安泰だ」
「もう一度言う。聖女など必要ない」
「せっかく準備したんだ。それを受け取らんのは無礼だろう?それとも、アロイージ王国をバカにするのか。いいから持って帰ってくれ。ペットほどしか手間も食費もかからん。皇宮の隅にでも置いておけばいいではないか」

 謁見の間がざわめきはじめた。

 ここにいる廷臣や貴族や近衛兵たちが、アデルモのあまりの言葉に反応している。

 どんなひどいことを言われてもかまわない。慣れているから。

 小さい頃から、家族やアデルモだけでなく使用人たちにもずいぶんとひどいことを言われ続けている。

 だから、どんなひどいことを言われてもわたしはかまわない。しかし、他国の皇帝を前にしてそんなことを平気で口にするのは、アデルモ自身の器量が疑われることになる。

 いいえ。すでに程度の低い国王と思われているに違いない。

 それが恥ずかしくてならない。