「ナオ・バトーニ公爵令嬢、おまえを王妃候補から外す。おまえは、姉に代わって隣国の竜帝に嫁ぐんだ。どうせここにいたって役立たずなんだし、王妃にするつもりもまったくないからな。おれと違って、竜帝は醜く意地悪で乱暴だそうだ。まっ、食われることだけはないだろう。言っておくが、おまえは捧げものだ。捧げものらしく振る舞え。いいな?」

 新国王アデルモ・ベルターニは、謁見の間で宣言した。

 多くの廷臣や貴族たちがいる前で。

 その中には、当然両親や姉もいる。

 バトーニ公爵家は、聖女の力を受け継ぐ家系である。

 その為、代々の当主は女子をもうける必要があり、その為には正妻だけでなく妾を囲うことを強いられる。

 わたしは、妾の子である。

 姉は正妻の子。どこにでもあるように、わたしはただ聖女になる為にだけ生まれたようなもの。

 そこに愛などなにもない。