「ニア、実は話したいことがあって」
「何? ルディの方もうまくいかなかったの?」
「いや、俺の方は、うまくいったというか、なんというか……」
「じゃあ、婚約解消できそうなのね! 羨ましい……」
そうか、羨ましいか……。
「今度そっちに行くから、その時に話をしたいんだ」
「こっちに来てくれるの? 嬉しい! その時にそのまま、駆け落ちしちゃいましょう」
「あ、いやその、駆け落ちはまだ早いかなって……」
「……ルディ」
「はい」
少し間を空けたあと、ニアが恐る恐る口にした。
「もしかして、ルディの方が上手くいったのって……」
「えっ、な、何」
「……私よりも、好きな人ができたの?」
本当に小さな声で、囁くように呟かれた震える声に、俺は色をなくして言い募る。
「ない! ないない、絶対それはない! 俺が好きなのはニアだけだ!!」
「無理しなくて…も………」
抑えるような嗚咽が聞こえる。違う、違うんだ、こんなふうに泣かせたい訳じゃないんだ。
「あの、ご、ごめんなさ……。……ショックで、祝ってあげられなくて……」
「違う! 祝わなくていい、俺はニアが好きなんだ! 会いに行くから、その時にちゃんと話そう。二日後にそっちに行く!」
「……え? あの、思ったより急だけど、日程がギリギリじゃない?」
「予定を早める! 今から支度して明日の朝には出る! 顔を見たいんだ、君に会いたい。そのときに、君を泣かせた俺をぶん殴ってくれ」
「ルディ……ばか」
ようやく聞こえた嬉しそうな声に、ほっと息を吐く。
「ニア、君だけを愛してる。二日後の夕方の鐘が鳴るときに、あの丘で会おう」
「私も愛してるわ、ルディ。待ってるから……」
ニアとの通信を切る。
勝負は、二日後だった。

