オフクロサマ

「そうだね。私達に子供ができたら安喜くんみたいな子がいいね」


ポツリと言った言葉に裕貴が隣で真っ赤になる。


「冗談だよ」


と笑ってみせたものの、いつかは本当にそうなればいいのになと思っていた。


それから１時間ほどお祭りを満喫したとき、不意に広場に流れていたBGMが静かになった。


人々の喧騒も自然と静かになっていく。


これからなにが始まるんだろう？


そう思っていると、広場中央に置かれていた松明に火が灯った。


急に明るくなった広場に少しだけ歓声が沸き上がる。


松明の明かりがつくと同時に広間の周辺を囲むようにつけられていた提灯の明かりは一斉に消えた。


「なにが始まるんだろう」


智香が呟いた時、友人と遊んでいた安喜くんが駆け戻ってきた。


「安喜くん、友達はもういいの？」


「うん。それより、一応お面をかぶっておいて」


安喜くんはそう言いながらも自分もお面をつけてスーパーマンの姿になった。


智香と裕貴のふたりも言われるがままにキツネのお面をつける。


お面をつけてしばらくすると、真っ黒な和服姿の男が広場の奥から現れた。