オフクロサマ

「もうふたりも危険な状態にある。俺たちが助けないといけないんだ」


「……東京の友達って、僕と遊んでくれた人たち?」


「あぁ、そうだよ」


隙間から見える安喜くんの顔が歪む。


「やっぱりそうだったんだね。あの日、4人の観光客が来た日、お父さんたちが話してるのを聞いちゃったんだ。あの4人は写真を撮影していたかもしれない。オフクロサンは東京まで行くかもしてないって……」


村人たちは最初から薄々感づいていたのだ。


あの4人が禁忌を犯してしまったことを……。


「それならどうしてあの4人に忠告してくれなかったんだ? オフクロサンが来るぞって」


裕貴の言葉に安喜くんは強く左右に首を振った。


「オフクロサンが追いかけてきて殺すなんて、信じてくれるの?」


そう言われて裕貴はハッと息を飲んだ。


どれだけ必死に説得しても、見えないオフクロサンが東京まで追いかけてきて殺すなんてきっと誰も信用しなかっただろう。


だから村人たちは余計なことを言わず、黙っていたのだ。


余計なことを口にすれば更にこの村のことを詮索されると恐れて。