オフクロサマ

たとえ聞こえたとしてもそれは操作している本人の耳にしか入らないほどの小さな音。


松明の弾ける音でかき消されてしまうような音だ。


もしかして、それすらもダメだというのだろうか。


もともと決められた人間と、炎、そして自然の音以外はすべてダメだとしたら?


「今日死んだ人はこの村の人だった。だから、すぐに追いつかれて死んじゃったんだ。でも、お兄ちゃんたちは東京の人なんだよね? それなら何日か、もしかしたらもっとかかるかもしれない」


死ぬのに時間差があるということだろうか?


どういうことなのかもっと聞きたいと思ったとき、奥から大田さんが出てきた。


さっきの態度をわびたように手にはおにぎりの入ったタッパーが持たれている。


「これ、よかったら。俺が作ったからちょっと不格好だけど持っていってくれ」


「ありがとうございます」


智香はそれを素直に受け取った。


大田はもう自分たちが東京に帰ると思っているようだ。


そして実際にそうした方がいいのだろうという予測くらいはできている。


だけど、ここまできて帰るわけにはいかない。