☆☆☆

あんな祭りを見たからだろうか。


また悪夢を見ていた。


場面は昨日の広場。


しかしにぎやかな提灯や屋台は出ていない。


あるのは燃え盛る松明と黒い和服の男の姿だけ。


和服姿の男はゆらりゆらりと左右に体を揺らしながらこちらへ近づいてくる。


智香は嫌な予感にかられながらもその場から動くことができなかった。


まるで足をコンクリートで塗り固められてしまったかのようだ。


ビクともしない自分の体に焦りを感じている間に、男はゆっくり近づいてくる。


そして気がつけば智香の体は横倒しにされていた。


立ち上がろうにもやはり体は言うことを聞かない。


手足をばたつかせてみても、全く動く気配がない。


黒い和服の男が智香の前で正座をした。


そしてどこからやってきたのか人々が茶碗とおつわんを並べていく。


味噌汁の匂いが智香の鼻腔を刺激した。


どこか懐かしさを感じるはずのその香りに強い吐き気がした。


だけど嘔吐しなかった。


お腹の中がなにかおかしい感じがする。