兵士ハンスはあわてて服のすそで手を拭き、おずおずと壊れ物のようにリュミエールの手をにぎり返した……。それは武骨な厚い手のひらで、日々厳しい訓練に耐えているのが伺える。

「ハンスね……いつもこの国を守ってくれて本当にありがとう。私、あなた方の無事を祈ってこれから毎日ここで祈らせていただくわ。命を大事にして、奥様や娘さん達にまた無事な姿を見せてあげてね」
「……ありがてえ。なんだかあなた様の目を見たらほっとしましたよ……。娘が嫁に行くまでは、絶対生き延びてやります。そうだ、良かったら他の奴らにもお言葉をかけてやってくださいませんか?」

 ハンスは気のいい笑みを浮かべると、後ろから羨ましそうに見つめる兵士達に首を向けた。

「そんな大層なものではないのだし、私は構わないけれど……シスターでなくてよいのかしら?」

 お飾りの聖女な自分には荷が重い……。

 辞退しようするリュミエールに……ロディアはゆっくりと首を振ると、参列者用の椅子に座らせ、背中をさすって励ましてくれる。

「いいえ……彼らの瞳を見れば、私などではなくリュミエール様がいいと思っているのがわかりますわ。あなた様さえ良ければ、時間の許す限り彼らに声をかけてあげてくださいませんか?」
「わ、わかりました……頑張ってみるわ」