フレデリクはともかくレクシオールまで現れるとは思わず、そのままの姿勢で硬直してしまうリュミエール。

 顔も血の気が引いて真っ白だ。

「……ヴァイオリンか。弾けるのか? 意外だな……」
「あ、の、ほほ、本日はお日柄もよろしいようで……あっ」

 ――カラン。

 目の前に進んで来た彼に動揺し、弓がその手から落ちてしまった。

「どうした……しっかり持っておけ」
「も、申し訳ありません……」

 それをさっと拾い上げ、彼はリュミエールへと手渡してくれる。
 蒼い双眸(そうぼう)と視線が合い、リュミエールはそれに吸い込まれるように目が離せなくなる。

「パメラよ、どうなのだ? この二人は上手くやれそうか?」
「はい、リュミエール嬢は私など足下に及ばぬくらい、頭脳明晰、語学堪能でいらっしゃいますわ。楽器の腕前もそれはそれは……楽師としても食べていけそうな位お上手です」
「へぇ……それはいい。レクシオール、早速一曲お願いしてみようじゃないか」