パメラはあわてて口をふさぎ、臣下の礼を取る。

 それも当然……。栗色の髪の貴公子の隣に現れたのは、他ならぬこの城の城主、レクシオール・ハーケンブルグ公爵閣下であらせられたのだ……。

(は、初めてだわこんなこと……)

 あの仕事一筋の冷血とも噂される程の方が、婚約者といえどわざわざ様子を見に来られるなんて……。

 もう公爵も御年二十を越えており、このまま誰にもお手を付けられぬままだと、後継が途絶える危険すらある。そんな折にようやく興味を持たれる御令嬢が現れたのだから、家臣として応援しないわけにはいかない!

(これは、期待できるかもしれない……。絶対にこの婚姻を成功させなければ!)

 この時私はリュミエール嬢の存在を、この公爵家の存続を左右するかもしれない格別丁重に扱うべき人材との確信を得たのだった。