公爵の容姿目当てで婚約者に名乗りを上げた軽薄な女性たちの自尊心を我しらずことごとく粉砕してしまったらしい……。だが、こんな程度で心が折れようものなら後々公爵閣下に恥をかかせるだけである。そんな女性を誰が胸を張って送り出せるものかと、腹を括り、私は決して手を緩めはしなかった。

 今からすれば私の容姿にも問題があったのかも知れない……。

 年は二十歳をとっくに超え侍女としての経歴は長くとも、容姿があまり若い頃と変わらない。そのせいで、外から来た人間にことごとく舐められ、自然とこちらの対応も厳しくなる。

 気位の高い貴族連中は何かあれば小娘が平民がと馬鹿にするので、今度もそうであればいつもどおり手を抜かず接してあげようなどと、ちょっと嫌味な風に私は考えていたのだが……リュミエール嬢を見て拍子抜けしてしまった。

 まだ出会ったばかりであるが、彼女は私の容姿を見て馬鹿にするどころか、非常に丁寧に接してくれた。そんなのは他にはあの大きなシスターや、ハイネガー伯爵と他数名位のものであったので、それだけで少し好感を持ってしまうほどだ。

(ちんまりとして可愛らしいので、なんとなく親近感を持ってしまうわ……気を引き締めないと)