――私、パメラ・ストリーニは十二の歳に下級侍女見習いとしてハーケンブルグ公爵家に勤め出した。

 生まれは平民であったが、父親が公爵家に抱えられた騎士であり、口利きをしてもらったことで下級貴族の下の娘等に混じって、この大きな城の下働きとして仕え始めることができたのだ。

 背も低く、身分であげつらわれることも多かったけれど、父親が騎士で厳しく育てられた私は気も腕っぷしも強かった。怒らせると怖いと恐れられながらも、真面目な仕事ぶりが認められ、私は数年も経たないうちに下級侍女たちのまとめ役へ……そして二十歳の頃には上級侍女へと抜擢されることになった。

 公爵閣下の妻の教育係を任せられることになったのは偶然だった。

 選ばれた良い家柄の娘達はとにかくプライドが高く、前任者が次々と(さじ)を投げ、逃げ出してしまったことで私にお鉢が回って来たのである。あまり気乗りしない仕事であったが、任されたばかりはやるしかない。 

 私は誠心誠意、今まで公爵家で培ったマナーを彼女達に教えこもうと務めた。

 しかしどうやら、それは貴族の令嬢方には厳しすぎたらしく、次々と家に逃げ帰るか、私との面会を拒否するようになる。