「……すみませんが、まだ御嬢様はお目覚めになったばかりでして……」
「朝早くに失礼いたします。あなたがリュミエール様のお世話係の、ケイティ様でお間違いありませんか?」
「ええ、そうです……あなたは?」
「わたくし、この城で上級侍女を務めさせていただいております……パメラ・ストリーニと申します。ハーケンブルグ公爵閣下の配下で城内の諸々を任されている、フェリックス家令からお二人のお世話を仰せつかりました。どうぞ、よろしくお願いいたしますわ」
「まぁ……こちらこそ。では中へどうぞ」

 黒い髪を肩口で切りそろえたまだ若い侍女は、足元まで届く長いエプロンドレスをつまんで、淑やかにお辞儀をする。

 ケイティと違って表情はあまり動かない、どこか冷たい印象のある美少女である。リュミエールはスツールから立ち上がると、笑顔で彼女の手を取った。

「お会いできてうれしいわ、パメラ。こんな立派なお城に来たことはないから、ケイティと私だけでは途方に暮れてしまうかと思っていたの。これから色々と頼りにさせてちょうだいね」
「ええ、もちろんでございますわ。王家に最も近い格式高い家柄のマナーを、リュミエール様にはしっかり身に着けていただけねばなりません。本日からひと時も離れずお世話させていただきますので、何でもお申し付けくださいませね」

 パメラはケイティをちらりと見た後、リュミエールの手をしっかりと握り返した。