「それはありがたいわ。それじゃあ今日もお願いね」
「他にも、さすがに公爵家は調度品も手入れが行き届いていて素晴らしいです♪」

 そろえられた高級な家具は、フィースバーク侯爵家とは比べ物にならない程だ。

 財政が傾いていた侯爵家では、一番下のリュミエールの使っていたベッドや鏡台などは所々()()が来てキイキイと時折耳障りな音を立てていた位で、着るものもほとんどが上の姉のお下がりを屋敷の職人が(つくろ)い直したものだった。

 そんな生活だったので、ついつい興奮しながら二人して傷など全くない新品同様の鏡にきらきら目を輝かせていると……室内を訪問するノックの音が外からする。

「どなたかしら……ケイティ、開けて差し上げてくれる?」
「ええ……どなたでしょうか?」

 ――御嬢様は寝巻のままだから、殿方であれば少し待っていただかなければならないわ……でもこんな時間にたずねてくるなんて、急ぎの要件なのかしら?

 そんなことを思いながらケイティが内開きの扉に手をかけて引くと、外には背の低い一人の侍女が待機していた。