公爵の城の一室で、木漏れ日の隙間から差す光に照らされて、リュミエールは目を開けた。

(あまり眠れなかったわ……)

 なんとなく、公爵のことやレグリオのことが頭によぎって、夜中はずっとうんうん唸っていた。天蓋付きの柔らかなベッドの上でくたっと首を傾けながら、リュミエールは朝にふさわしく無い溜息をつく。

「御嬢様、失礼いたします……あ、起きてらっしゃったんですね。おはようございます」
「ええ、おはようケイティ。よく眠れたかしら」
「私はそれはもうぐっすりと。どこでも眠れるのが私の自慢でございますから」

 ああ、今日も彼女は笑顔が眩しい。
 リュミエールはつやつやと輝くその顔を見て、ケイティがいてくれて本当に良かったと思う。

「さあ、御嬢様、お喜びください! なんとこのお城ではお湯が使い放題なのでございますよ! 今朝も厨房から沢山いただいてまいりましたから、もうあんな冷たいお水に震えながら身支度を整える必要はございません!」

 どうやら彼女は、カートに乗せた銀のボウルに暖かいお湯を汲んで来てくれたようだ。それをみて、思わずリュミエールもニッコリしてしまった。