【WEB版】空っぽ聖女と婚約破棄されましたが、真の力が開花したのであなたなんてこちらから願い下げです!~義姉に全て奪われたけど、銀竜公爵からの溺愛が待っていました~

 縁談が決まった時は、涙が次から次へと出て止まらない位に喜んだ。

 何の取柄の無い自分でも、家や国のために役に立つことが出来るのだと……自分の存在をやっと認めてもらえた気がしたのだ。

 残念ながら、それが決まった後も、彼女に対する家族の反応は冷ややかなものであったが。


 ――フィースバーク侯爵家。

 救国の聖女の功績を()って家格を引き上げられたこの一家は、現在大きく傾きを見せている。
 そもそも、この家が取り立てられるきっかけとなった聖女とはいかなる存在なのか……?

 それは今となっても明らかにされておらず……あくまで一説によると、それはこの世の自然や生き物全てに宿る、魂に干渉できる存在なのだとか。

 例えば、伝承に伝えられる聖女の力は、火の魂に働きかけて火災や地震を一瞬で(しず)めたり、水の魂に働きかけて雨を呼んで民を干ばつから救ったりするほどのそれはそれは大きなものであったそうだ。

 しかしそれは代が替わると共にゆっくりと失われ、今ではリュミエールの上の二人の姉、サンドラとリーシアも、バケツ一杯程度の水を操るとか、ちょっとした火を出したりするという程度のことしかできない。

 つまり、お飾りだけの貴族家となり果ててしまったのだ。