僕の自嘲を、レクシオールは気持ち悪そうに眺めながら、質問を質問で返してくる。

「では誰がやるのだ……?」
「……君がやってみるって選択肢はないわけ?」
「俺は女の扱いなど心得ておらんし、公爵家当主としての仕事がある」
「あのねえ……」

 (こいつはもう……)と思いながら僕は額に手を当てる。

 もちろん、彼と婚約したのはリュミエールが一人目ではない。
 成人する前から結構な数の女性がレクシオールと婚約したがっていた……それは見ての通り、彼の美貌のせいだ。

 齢が同じ頃の僕ととレクシオールが知り合ったのは、王都にある宮廷学校でのこと。

 女性も嫉妬する程の美貌の持ち主の彼は、学校を卒業するまでに何十人からの女性から恋文を貰い、最後の方は面倒だからと受け取ることすら拒んでいた。

 女性が寄らぬように男の取り巻きを引きつれ、学校内を颯爽(さっそう)と歩く様は、陰で《竜帝》などとささやかれていたほどだった。

 しかし、いつまでもそうしているわけには行かない。男色だのと不名誉な噂を立てられても困るからね……。