「全く君は女泣かせだね……後でフォローする僕の身にもなってくれよ」
「ふん……」

 リュミエール嬢を案内したその夜、僕は執務室でレックスと酒を()み交わしていた。実は、彼女の身元を調べ、この公爵の妻に推薦したのは僕自身だ。

 選んだ理由を強いて言うならば……あの時リュミエールを抱き上げるレクシオールの姿が、あまりにも絵になっていたからというただの勘、こじつけだ。とはいえ一応身辺調査はしてある。

 通いで屋敷に務める者から色々と聞き出したところによると、リュミエール嬢は亡くなった前妻の子供で、両親やあの姉達に酷い扱いを受けているらしい。

 屋敷から出ることもほとんど許可されず、食事なども一番最後の残り物を与えられ、顔を合わせば罵倒を浴びせられるという絵に描いたような冷遇っぷりだ。おそらく茶会で彼女の悪評を広めたりしたのも、あの姉二人じゃないだろうかと僕は思わず邪推してしまった。

 レックスも最初は助けた弱みに付け込むようで気分が悪いとは言っていたけれど、あの場で見たことや、調査報告を(かんが)みてほぼ即断に近い形でフィースバーク侯爵にリュミエール嬢との婚約を申し出た。