「話はそれだけか? ならばフレディ、この二人を部屋へと案内してやれ。俺は仕事があってこれ以上付き合っていられんからな……」
「はぁ……初顔合わせだというのに随分つれないもんだね? 誰かに盗られても知らないよ?」
「構わん……いたずらに子供など作られては困るが、俺がその娘を縛るつもりは無い」
「全く……さあ、ではお二人とも行きましょうか。長旅の疲れもあるでしょうし……後はごゆっくりお休みください」
「は、はぁ……レクシオール様、失礼いたします」

 リュミエールが残念なそうな顔をして執務室を後にする時も、彼は背中を向けたままこちらを一度も見ようとはしなかった。

「お、御嬢様!?」
「あっ……ごめんなさい」

 退出した後、リュミエールの頬をぽろっと涙が伝い、慌てて目を閉じる。

 この涙はそっけない対応をした彼のせいではない……彼は、怒りはしたけれど理不尽なことは言わなかった。たぶんきっととても真面目で、自分の幸せよりも大事な物が他にある人なのだとリュミエールは思ったのだけれど……。

(勝手に期待しておいてがっかりするなんて、卑怯だわ……私)