彼女は胸の前で両手を組むと、家で祈っていた時と同じように心を空っぽにする。

 朝にレグリオとアリエステルの為の祈りは済ませているが、もう一度。
 今の自分には、これ以上に叶えたい願いがあるわけでもないから。

(二人が、またどこかで出会えますように……)

 そうしていると、わずかな音を立てて扉が開かれ、フレデリクが慌てた様子で挨拶をするのが聞こえた。

「シスター・ロディア……! これは申し訳ない……悪意があって忍び込んだのではないのです」

 リュミエールが少しして振り向くと、そこではベールをきっちりと身に着けた一人の若いシスターが両手を合わせており、彼女は穏やかに微笑む。

「大丈夫、気にしておりませんよ……あんなに真剣に祈りを捧げて下さる人に、邪な心などあろうはずもございませんから。まぁ、もしかしてあなた様は……」

 彼女はフレデリクに会釈するとリュミエール達の元へと歩み寄る。