「どうぞどうぞ。今丁度誰もいらっしゃらないようですから」
(よいのかしら……勝手に入って)

 少しだけそう思いつつも気になる心の方が勝り、二人してフレデリクの招きに応じ、堂内に足を踏み入れる。

「わぁ……」

 リュミエールは顔を輝かせる。

 内部は広くはなかったが、その静謐(せいひつ)な空間は安らかな記憶を呼び起こし心を喜ばせた。陽光を取り込んだステンドグラスの色とりどりの影が足元にゆらぎ、奥には設置されているのは一台の古いオルガン。誰かが熱心に手入れしているのだろう……わずかな(ほこり)も見当たらず、花瓶から覗く美しい花々が落ち着いた香りを内側に振り撒いている。

「素敵な場所……」
「ふふふ、今はいらっしゃらないようですが、また後程ここを管理しているシスターにご紹介しましょう」
「ええ、是非……少しだけ祈らせていただいていいかしら」
「どうぞどうぞ」

 フレデリクの許可を得て、リュミエールは硝子で表わされた神様たちの前に膝をつく。床も見事に磨かれており、汚れる心配も必要ない位だった。