数日の旅の後、リュミエール達はハーケンブルグ公爵家の城へと辿り着く。

 フィースバークの屋敷とは比べ物にならない程大きな城は、門の前に立つと小さなリュミエールでは顔を上げても塔の先が目に入らない位だ。

(私、こんなところでちゃんとやっていけるのかしら……)

 不安がる彼女を見かねてか、フレデリクがその手を下にして差し出す。
 
「大丈夫ですよ、広いだけで他と変わりません。これから城内を案内させていただきますので、よろしければお手をどうぞ」
「え、ええ……」

 戸惑いながらもリュミエールが自分の手を重ねると、彼はゆっくりとした足取りでその手を引いてゆく。女性のリードに慣れているのだろうと思われる、素晴らしい気の配り様だった。

 サロン、会議場、浴場、客室、図書館、庭園、使用人小屋、食堂、厨房、劇場、衣裳部屋などなど……向こうの屋敷では見られなかったような施設もあり興味はあったものの、案内されている最中に無理を言う気にはならない。ほとんど外観だけを確認して、リュミエールはその場を後にする。

 そうしていると、一件の小さな建物が目に留まった。