「いやいや、あのようなことがあれば無理もない。本当にとんでもない奴ら……っと失礼。だけど、なにか非礼があったにしても、あのような場でわざとらしく(おとし)めるようなことをされるなんて……。しかもご姉妹の方まで一緒になってというのは、少しやり過ぎであると感じましたね」
「あのお二人は、リュミエール様とはお母上が違うことを理由に、事あるごとに陰湿な苛めを繰り返していたのです! そればかりではなく、お父上や二人のお母上まで……! 本当に、ご家族の為さる仕打ちとは思えません!」
「……ケイティ、気持ちは有難いけれどそこまでにしておいてちょうだい。フレディには関係のないことだもの。わざわざ嫌な気分にさせるのは申し訳ないわ」

 パンパンとひざを叩き、(いきどお)ったのはケイティだ。
 今度はリュミエールがいさめる側に回らなければならなくなった。

「そ、それより……私、少し安心しました。冷血公爵なんてあだ名をうかがっていたものだから。あんな多くの人の前で私を助け出して下さったのですから、さぞ、勇気のある暖かい御心の持ち主なのだと思いますわ」
「う~ん……まぁ、確かに肝は据わっているし、暖かいかどうかは別として中々面白い男ですよ、彼は。ハハハハハ……」

 少し微妙な言い回しをして歯を見せて笑うフレデリクに、リュミエールは首をかしげる。すると彼は悪戯っぽく口の端を上げた。