「そうは言うが……カシウスはあの新しい婚約者を好いているようだしなぁ。ううむ、ではお前がその娘を(めと)ってやればよいのではないか!」
「はぁ!?」
「元々その娘がお主に懸想しておったと知ったカシウスが、二人が結ばれるように配慮したと噂を流せば、人の心を(おもんばか)る優しき次期君主であると、ある程度の汚名はすすげよう。名案ではないか……誰かおらんか?」

 早速そんな小細工を始めようとした国王に、僕は顔を真っ赤にして反論しようとした。

「父上! あなたはどこまで……」

 だが父はそれを片手で遮る。

「そう怖い顔をするな。わしもカシウスが名君たり得ぬことはわかっているが……さりとて生まれの順だけはどうにもなるまい。国のことを思うのであれば、どうかお前がうまくあやつを支えてやってくれんか」
(……!! ふざけるな……ふざけるなよ!)

 僕は拳をきつく握り締める。
 国王は兄が……あいつが目下のものをどのように扱って来たか知らないのだ。