……日差しの穏やかな午後、レクシオールは執務室で書き物をしていた。

 結婚式も無事済み、リュミエールと幸せを誓い合った後のこと。
 もちろんレクシオールとしては仲睦まじい新婚生活をしばらく過ごしていたかったのだが……領内の仕事で最終的な判断を委ねられるのは彼だ。甘い生活はほどほどにして、また仕事漬けの毎日に戻らなければならなかった。

(北部国境に特に動きは無し……国内も即位後安定しており、危惧された他国の干渉もほぼ無し、か。油断は出来んが、この様子なら年内はおそらく、領内の制度改革や公共事業の推進に集中できるだろう。優先は……)

 コンコンコンコン……。

 考え込むレクシオールは届いたノックの音に入室の許可を告げた。

「入れ。……何だ、お前達か」
「レックス、お疲れ様です」
「お仕事中失礼いたしますわ、公爵様」

 そして、入って来た二人に表情を緩める。

 部屋の外から笑顔を見せたのはリュミエールとケイティだ。
 侍女が押すカートの上には用意してあるのは茶器だが……リュミエールの手に持つ四角い箱はなんだろうかと、レクシオールは疑問に思う。