それ自体はある程度、運命だと納得せざるを得ないとわかっている。もし、カシウスが公明正大で、文武に優れ、人の心をつかむ力が有ったなら……いや、せめてそのような名君では無くても、ある程度普通の感性を持ち、王としての責任を全うする気持ちがあったなら、僕は喜んで彼を支えるつもりだった。

 だが、カシウスは、容姿こそ優れているものの……高度な教育を受けてもなんの才能を示さず努力もせずに、王太子としての権威だけを振りかざしていて城内の評判は(かんば)しくない。

 それに対し唯一意見できるのが、目の前の父である国王だけだというのに……彼は兄カシウスに対して望むものがあれば全てを与え、愚行を(いさ)めることもしなかった。その関係が、悪循環となって今のカシウスの性格を形作ったのだと、父上は果たして気づいているだろうか。

「それだけではなく、諸侯への外聞も悪すぎます! 次期王たる方があのようなふるまいをされては、いつあのような扱いを自分達がされるのかと、貴族達の心も離れましょう! どうか、ご再考を……」

 こんなことが繰り返されれば王家への信頼は揺らぎ、国を割ってでも秩序を取り戻そうという人間が現われ、内戦にもつながりかねない。あのカシウスの性格であれば、王になれば今以上に好き勝手を繰り返すに違いない。

 この国の平和を守りたい一心での忠告。
 だが……ロベルトは王の次の言葉に二の句も告げなくなった。