レクシオールの微笑を真正面から見返すことが出来ず、ついケイティは目元を覆いながら、リュミエールの座る場所を差し示す。 

「……レックス」
「……エル」

 そして二人はそのままたっぷり数十秒は見つめ合い、同時に硬直から復帰した。
 
「あの……」
「俺から先に言わせてくれ。やはり、俺にとってお前は特別のようだ……今までこれ程女性を美しいと思ったことはない。お前と出会えたことが、俺にとって間違いなく一番の幸せだ」

 するとリュミエールは、紅が引かれた唇を少し開けて呆けたように言う。

「……言いたいことを全部言われてしまいました」
「ぷっ……はは、はははははは! いや、うん、充分だ。さあ、手を」

 こんなに嬉しそうに笑うレクシオールをリュミエールは見たことはない。
 それだけで彼女は目頭が熱くなったが……今日はまだ泣くわけには行かない。
 懸命にこらえ、立ち上がる。