――椅子に座り、扉が叩かれるのを待ちわびながら……その日のリュミエールは視線を俯け意識を遠くへ飛ばしていた。

 レグリオとアリエステルの最後を見届けた後、領内に戻ったリュミエールとレクシオールは、婚約を知らしめるために少しずつ、他の貴族も出席する茶会へ訪れるようになった。

 あんなに大勢の人と話すことが苦手だったリュミエールも、レクシオールの助けもあり、少しずつ他と打ち解けることができていった。

 彼女の家が没落したことを悪く言うものはいたが、元王太子カシウスの命を救ったことや、現王ロベルトが二人を友人として認めていることもあり、そういった声は次第にさざ波のように引いてどこかへ消えてしまった。

 ダンスももう、下手だったころの面影は見られない。
 リュミエールもレクシオールも、互いを見つめ合って踊るこの時間が楽しくて仕方がなく、そんな幸せそうな二人を見て、多くの貴族たちが羨ましそうにささやき合った。

 もう銀の竜の夢を見ることがなくなったリュミエールは、朝の祈りを礼拝堂でシスター・ロディアや城の住人達と行うようになり、そこでも多くの人と触れ合う。