「……夢では無いのだよな? 俺が俺ではなくなって……いたのか」
「ええ……私も。不思議な感じだったけど、でも……出会えたのね、あの二人は」

 二人は左手に光る二つの指輪を見つめた。互いの瞳の色を表わすそれは、心なしかわずかに輝きを失ったように見える。それだけが少し寂しい。

(でも、二人はちゃんと巡り合って、一緒の所に行けたんだわ、良かった……)
「……良かったな」

 気づくとレキシオールが肩を抱き寄せてくれていた。
 きっと、リュミエールが知らず知らずのうちに目を潤ませてしまっていたからだろう。

 彼の胸の中は暖かくて幸せで、もうずっと離れたくないと思った。

「……レックス、私を一生あなたのそばに置いてくれますか?」
「何を当然のことを言ってるんだ。こんな泣き虫を一瞬だって離せるもんか。一生俺の腕の中で捕まえておく……」
「……はい!」

 ……その日はずっと二人でそこで街並みを眺めて過ごした。

 春先の寒さも二人で寄り合えば気にならなかったし、退屈など微塵も感じることはなく、ただただ幸福な時間だけがそこにあった……。