そんな仏頂面のレックスの言葉がおかしくて、楽しそうに腕を絡めるリュミエール。

 なんとなくこの場所の花達も喜んでいるような気がする。

「きっと聖女様の生まれ変わりが沢山いて、レックスの姿に見惚れているんでしょうね」
「ぞっとしないことを言うなよな。俺はお前だけで手一杯だぞ……」

 周囲ににらみを利かせるレックスを笑うように、マリーゴールドが風に揺れた。


 ……二人はそんな風に仲睦まじく歩きながら、やがてその場所に到達する。
 木々の影が差した小高い丘からは、眼下の街並みが広く見渡せて二人はほっと一息ついた。

 目の前にある石碑も、そう仰々しくはないこじんまりとした物だ。

「静かな場所だな……有名な聖女の墓地であれば、もっと大規模で観光地となっていてもおかしくないのではないか?」
「実は、そうして訪ねてくる一般の人々の為に、大きな偽物のお墓が別の所にあるんですって……彼女の眠りを妨げないようにとの配慮みたいです」

 シュミットルに渡された地図には、そちらと間違わないよう細やかな注釈が付いている。